
腫瘍マーカーは「がんを早期発見するための検査」ではない
腫瘍マーカーは、血液中にわずかに漏れ出る「がん細胞が作るたんぱく質など」を検出する検査です。
代表的なものとして、以下があります。
腫瘍マーカー名 | 主な関連がん |
CEA | 消化器がん(大腸・胃など) |
CA19-9 | 膵臓がん・胆道がん |
AFP | 肝臓がん |
PSA | 前立腺がん |
CA125 | 卵巣がん |
一見便利そうですが、実はがんがある程度大きくならないと値が上がってきません。
「早期がん(ステージⅠ)」ではほとんど引っかからないのです。
実際のがんの診療場面では、腫瘍マーカーは診断には用いられず、すでにがんの診断を受けた人が治療の効果を判定するときなどに利用されています。
腫瘍マーカーで「異常なし」と出ても安心できない
- 感度が低い(見逃しが多い)
- 例えば大腸がんでのCEAは、ステージⅠでは約3割しか引っかからない。
- 特異度も低い(がん以外でも上がることがある)
- 喫煙やアトピーなどの炎症、良性疾患でも上がることがある。
腫瘍マーカーの測定はがんの早期診断に無益なだけでなく、「引っかかったけど結局がんじゃなかった」という過剰診断リスクや、「異常なしだから安心」と誤解してしまうリスクという問題もはらんでいます。
がんを早期発見したいならどうすればいい?
がん検診は、その人の年令やリスクに応じて、1つ1つの検査を地道に受けることが基本です。たとえば胃がんなら胃カメラ、大腸がんなら便潜血検査や大腸カメラ、肺がんなら胸部CTなどです。
ピロリ菌に感染している人は胃がんのリスクが高いですし、50歳をすぎると男女ともに大腸がん罹患のリスクが高まります。その人の年令やリスクに応じて、各種検査を組み合わせることが、がん早期発見の最短ルートです。
「マイシグナル」のような新しい技術に期待も
最近は、マイクロRNAなど新しい技術を用い、血液や尿から多くの種類のがんを同時に検出しようとする試みもなされています。
たとえば「マイシグナル」は、従来の腫瘍マーカーよりも幅広いがん種の検出に挑戦しています。
ただし、これらの技術もまだ研究段階で、「早期発見に必ず役立つ」とはまだ断言できません。
これからのエビデンスの積み重ねを待つ必要があります。