
「膝の痛み」は歳のせいだけではありません。しっかりと対策をすれば、痛みのない生活に近づけます。
今回は膝の痛みの原因として一番多い、「変形性膝関節症」についてお話します。
どんな病気?
変形性膝関節症は、長年にわたる膝への負担の積み重ねによって起こる病気です。関節の軟骨がすり減り、骨同士がこすれあうことで痛みや腫れ、動かしにくさが出てきます。
特に高齢者に多く、歩行や立ち上がりなどの日常生活動作(ADL)に支障をきたし、生活の質(QOL)を下げてしまいます。進行すると、要介護・要支援となる原因にもなります。
日本での現状
- 約20~30 %の方が潜在的に変形性膝関節症を抱えていると考えられています。
- 女性に多いです。
- 加齢や体重増加に伴い増加します。そのほか、糖尿病、高血圧、認知機能障害があると疾患リスクが上がります。
それぞれのリスク上昇率は以下のとおり:
高血圧:2.48倍
耐糖能異常(糖尿病予備軍):1.92倍
軽度認知障害:4.19倍 - アジア人の生活様式(正座やしゃがむ姿勢)も、膝への負担を増やすとされています。
対策・治療法は?
- 日常生活の工夫
・T字杖は痛くない側の手で持つとバランスが良く、痛みが軽減します。
・両膝が痛い場合はシルバーカー(歩行補助車)が有用です。
・正座や布団からの立ち上がりを避けるため、洋式の生活様式やベッドの導入が推奨。 - 運動療法・体重コントロール
・大腿四頭筋(太ももの筋肉)を鍛える運動は進行予防に効果的ですが、効果が出るまでに2〜3ヶ月かかるため、継続が大切です。
・体重の5%以上の減量が推奨(例:体重60kgなら約3kgの減量)。 - 装具療法
・膝装具(サポーター):関節を安定させて負担を軽減。
・足底板(インソール):膝の傾きを補正し、内側への負担を減らす。当院で作成可能です。 - 薬物・注射治療
ヒアルロン酸注射(関節内注射)
・関節の潤滑剤のような役割を果たし、衝撃吸収や摩擦軽減に役立ちます。
・日本整形外科学会のガイドラインでは87%の推奨、人工関節手術を遅らせる効果があることが報告されています。ただし、OARSI(国際変形性関節症学会)では効果は限定的との評価もあります。
・当院でも行っております。
PRP療法(自己血小板由来の注射)
・軟骨の再生を促すと期待されており、炎症を抑える可能性もあります
・生きた細胞を用いるので「再生医療」と標榜されることが多いですが、正確には抽出した液に含まれる成長因子などの成分に効能があるものであり、医学的に厳密な再生医療ではありません。
・科学的根拠(エビデンス)はまだ不十分です。
・当院では行っておりません。
まとめ
- 変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減ることで起こる関節の病気です。
- 女性や高齢者に多く、肥満・高血圧・糖尿病・認知機能低下がリスクになります。
- 治療には運動療法、体重管理、装具、ヒアルロン酸注射などがあります。
- 日常生活の工夫と早期の対策で、進行を抑え痛みの軽減が期待できます。