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「年を取ったら血圧は多少高くても大丈夫」って本当?|横浜市青葉区にある内科、小児科、家庭医療-ファミリークリニックあざみ野

「年を取ったら血圧は多少高くても大丈夫」って本当?

「年を取ったら血圧は高くてもいいんでしょ?」
そう思っていませんか?

実はこの考え、一部は正しくても、放置すると危険なことがわかってきています。
今回は、高齢者の血圧と健康リスクについて、最新の研究をもとにお話しします。

CVDとは?〜命や生活にかかわる病気〜

CVDとはcardiovascular disease(心血管疾患)の略で、心臓や血管に関わる病気のことをいい、具体的には

  • 心筋梗塞
  • 狭心症
  • 心不全
  • 脳卒中

などが含まれます。

これらCVDは日本人の死亡原因の第2位であり、要介護の原因の第1位となっています。
突然死の原因となるだけでなく、寝たきりの原因にもなる大変やっかいな病気です。
CVDを防ぐことは近代医療が求めてきた究極の目標といっても過言ではありません。

CVDの原因は喫煙、糖尿病、脂質異常症など多岐に渡りますが、最も影響が大きいのが「高血圧」です。

血圧が10上がると、こんなにCVDリスクが上がる!

血圧がわずか10mmHg上昇するだけで、CVDのリスクが大きく上がることがわかっています。

  • 女性:CVDのリスクが25%増加
  • 男性:CVDのリスクが15%増加
  • 死亡リスク:16〜17%増加

さらに、血圧値が高いほど、10年間のCVD発症率も以下のように跳ね上がります。

血圧レベル(mmHg) CVDリスク
120/80(基準) 1.0倍(安全)
130/85 約1.2倍
140/90 約1.5〜2.0倍
150/95 約2.5倍
180/110以上 約10倍

 

高齢者でも「高血圧は危険」です

「高齢だから多少高くても大丈夫」、そうとは言い切れません。
たとえば78歳で収縮期血圧(上の血圧)が160mmHgある人の場合、以下のようなリスクが報告されています。

疾患 10年以内の発症率 正常血圧に比べて
脳卒中 約20〜25% 約4倍
心筋梗塞 約10〜15% 約2〜3倍
総CVD全体 約35〜40% 高リスク群

つまり、3〜4人に1人が脳卒中を、2〜3人に1人が心臓病を発症する可能性があるということです。

血圧を下げるとどんな良いことが?

最近の研究では、「高齢者でも血圧をしっかり管理するとメリットが大きい」と分かってきています。

主なメリット

  • 心筋梗塞や脳卒中のリスク低下
  • 死亡率の低下
  • 認知症リスクの低下(最大30%減)

特に健康状態が良好な高齢者にとっては、収縮期血圧を130mmHg未満に保つことで、これらの予防効果がはっきり確認されています。

ただし、すべての高齢者に一律ではありません

  • 体が弱い方(フレイル)
  • 認知機能の低下がある方
  • 余命が限られている方

このような方では、血圧を下げすぎると、転倒・失神・腎障害のリスクが上がることもあります。

そのため、「誰にでも厳格な血圧コントロールが必要」というわけではなく、個別に判断することがとても重要です。

まとめ

  • 高齢者でも、血圧が高いとCVDのリスクは上がります
  • 特に160mmHgを超えると、脳卒中・心筋梗塞のリスクが非常に高くなります
  • 健康状態がよければ、血圧を130mmHg未満にコントロールすることで寿命や生活の質が保てる可能性があります
  • 一方で、体が弱い方には慎重な調整が必要です

最後に

「血圧は高くても平気」という思い込みが、将来のリスクを高めているかもしれません。
ご自身の健康状態に合わせて、無理のない範囲で血圧を整えることが、長生きと元気な毎日につながります。

クリニックでは一人ひとりのリスクを考え、必要なレベルに血圧をコントロールするよう調整を行っています。
ご自身の適切な血圧値がわからないとき、降圧薬を飲むべきか、減らすべきか迷ったときなど、どうぞ遠慮なくご相談ください。