
「このくらいの数値なら薬はいらないのでは?」
「生活習慣の改善でなんとかなるのでは?」
「薬は副作用が怖いし飲み続けたくない」
診察中によく聞くご相談です。実際、コレステロールが高い人すべてに、すぐ薬が必要なわけではありません。まず生活習慣の改善を優先するケースもあります。
一方で、少しだけ誤解があります。コレステロールの治療は「今の数値」だけで決めるものではないという点です。
治療の目的は「数字の改善」ではない
コレステロール治療の本当の目的は、将来の心筋梗塞や脳梗塞を防ぐことです。
ここで大事になる言葉が、ASCVD(動脈硬化性心血管疾患)です。
かんたんに言うと、動脈硬化が原因で起こる以下のような疾患をまとめた呼び方です。
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 脳梗塞
- 一過性脳虚血発作(TIA)
- 末梢動脈疾患(PAD)
コレステロール治療は、単に「検査の数字を下げる」ためではなく、ASCVDを防ぐために行います。
最近ではさらにASCVDに加え、心不全や認知症も予防目標として加えられることもあります。
私たちは「LDLがいくつか」ではなく「将来どれくらい血管が詰まるリスクがあるか」「これらの病気にかかる可能性がどのくらいあるか」を見て治療の判断を行います。
どこからが治療の目安か?
例えば、悪玉と呼ばれる「LDLコレステロール」が同じ140でも
- 糖尿病がある人
- 血圧が高い人
- タバコを吸う人
- 腎機能が低下している人
- 家族性(遺伝性)の高コレステロール血症がある人
では将来のリスクが大きく異なります。
どれも該当しない人の場合、LDLコレステロールが160〜180を超えたら薬による治療が検討されますが、リスクが高い人の目標値はもっと低くなります。
たとえば糖尿病がある人の基準値は100です。
さらに、心筋梗塞や脳梗塞の既往がある方は、70以下が目標になります。
家族性の高コレステロール血症では、若くして心筋梗塞などの病気を発症する確率が高いため、より早期の治療開始が必要となります。
これらの基準は、過去の多くの研究結果をもとに、「どの水準まで下げればASCVDを起こす可能性が最も低くなるか」を割り出したものになります。
自覚症状はありません
コレステロールは、自覚症状がないまま静かに血管へのダメージを蓄積させていきます。
検査結果が基準を下回ったかどうかで一喜一憂するのではなく、「自分の動脈硬化リスクはどのくらいか」「どの程度の数値を維持すればよいか」といった視点で考える必要があります。
また、生活習慣の見直しで改善できる人もいますが、それだけではASCVDを予防できる水準まで数値が下がらないことが多いのも確かです。
判断に迷ったら、クリニックでぜひ一度ご相談ください。


