
目次
結論からいうと、睡眠薬と認知症の「因果関係」ははっきり証明されていません。
ただし、「関連がある可能性」が多くの研究で指摘されています。
現在わかっていること
①「関連あり」とする研究
- 睡眠薬(特にベンゾジアゼピン系)を長期・高頻度で使う人は認知症リスクが高いという結果が複数ある
- 使用量や期間が多いほどリスクが上がる傾向も報告されている
- 一部研究では、頻繁に睡眠薬を使う人は最大で約1.7倍程度のリスクという推定もある
②「因果関係は弱い/不明」とする研究
- メタ解析(多くの研究をまとめた解析)では「関連はあるが証拠は弱く因果関係は不明」と評価
- 他の研究では「認知症リスクは増えない」という結果もある
- 交絡(因果関係:持病・うつ・不安など)を調整すると関連が消えることもある
③「逆の因果(逆因果)」の可能性
- 不眠そのものが認知症の初期症状のことがある
- その結果、「認知症の前段階 → 不眠 → 睡眠薬使用」という順番になっている可能性がある
以上をまとめると、
- 睡眠薬と認知症には「関連」はある
- しかし「睡眠薬が認知症を引き起こす」とは証明されていない
- 特に長期・大量使用はリスクの可能性あり
- 不眠そのものが原因の可能性も大きい
といったことが言えます。
ただし、睡眠薬が「せん妄」や「転倒」のリスクを増すことは確実であり、高齢者が睡眠薬を使用することにリスクがあることは間違いありません。
睡眠薬の種類による違い
① ベンゾジアゼピン系(いわゆる古い睡眠薬)
例:デパス、リーゼ、レンドルミン、サイレースなど
- 多くの研究で長期使用と認知症リスク上昇の関連ありとされている
- 特に「高用量」「長期間(年単位)」でリスクが高い傾向
- ただし、因果か相関かは未確定、つまり「不眠が強い人=もともと認知症リスクが高い」だったという可能性もあり
② Z薬(非ベンゾジアゼピン系)
例:マイスリー、ルネスタなど
- 一部の研究で軽度のリスク上昇の可能性を指摘
- ただしベンゾジアゼピン系の睡眠薬よりリスクは低いと考えられている
③ オレキシン受容体拮抗薬(最新の睡眠薬)
例:ベルソムラ、デエビゴ、クービビック、ボルズィ
- 市場に出たばかりの薬であり、現時点では明確なデータはない
- 理論的には認知症に対して予防的に働く可能性が期待されている
実際の考え方
現実的には、不眠により生活に支障が出ていれば短期間の使用では認知機能への影響は考えなくてよいが、長期の使用になれば睡眠薬の種類を選ぶのが重要といえます。
特にここ10年で普及してきている「オレキシン受容体拮抗薬」は依存性、耐性の低さでも旧来の睡眠薬より安全と考えられており、現在ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を使用している方は、薬の変更を医師に相談することも選択肢になると思います。


