
「具合が悪くなったら、病院に入院するのが一番安心だ」 そう思っている方は多いのではないでしょうか?
たしかに病院は設備が整っていますが、80歳を超えた高齢の方にとっては、「入院」がかえって健康を損なう原因になってしまうことがあります。
1. 入院10日で「7年分」老化する
高齢者が病気やケガで10日間ベッドの上で安静に過ごすと、7年分の老化に相当する筋肉量(骨格筋)が失われるという現象が起こります。
医療の世界ではこれを「入院関連機能障害(HAD)」と呼び、高齢者の大きなリスクとして問題視しています。
なぜ、わずか10日でこれほど弱るのでしょうか?
- 活動量の激減:ベッドから動かない状態が続くと、下半身を中心に筋肉が急激に萎縮します。
- 低栄養とストレス:体内の強い炎症や食欲低下が重なると、体は自分の筋肉を分解してエネルギーに変えてしまいます。
- 筋力低下のスピード:高齢者は若者に比べ、筋肉を失うペースが驚くほど早いです。
その結果、元の病気は治っても「自力で歩けないので自宅に帰れない」という事態を招き、そのまま要介護状態や施設入所を余儀なくされるケースが少なくありません。
2. 「環境の変化」が脳と心に与えるダメージ
入院は筋肉だけでなく、脳への影響も大きいといわれています。
高齢の方にとって、住み慣れた自宅を離れることは心身に大きなストレスになり、これを「リロケーションダメージ(転居による影響)」と呼びます。
病院という慣れない場所でストレスが増す一方、刺激が減ったり、心が不安定になることで認知症の症状が一気に進むことがありえます。
入院中にせん妄(※)を起こすと、その後認知症を起こすリスクが5倍に高まるといわれています。
※せん妄:環境の急激な変化や身体的なストレスにより、脳の機能が一時的に混乱し、幻覚や興奮などを来す状態。
3.「自宅で治す」という選択
入院には、命を守るための「よい入院」と、本来は避けられる「悪い入院」があります。
悪い入院は、良質な在宅医療により避けることができます。
現在の在宅医療のレベルは格段に上がっており、住み慣れたわが家でリラックスした環境のまま、病院と同レベルの医療やリハビリを受けることができるようになっています。
「入院しない者勝ち」の生活を送るためには、不安が出てきた段階で在宅医療に詳しい「かかりつけ医」を見つけておくことが大切です。
信頼できるかかりつけ医と早い段階から将来の生活について相談しておくことが、不必要な入院を避け、自分らしく元気に過ごすために何より大切なことです。


