
食中毒というと「ノロウイルス」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし近年は、ノロウイルス・カンピロバクター・アニサキスの3つで食中毒全体の約80%を占め、その中でもカンピロバクターは細菌性食中毒の代表的な原因菌で、毎年多くの患者さんが発生しています。
カンピロバクターとは?
カンピロバクターは、主に鶏肉に存在する細菌です。
感染源の半数以上が鶏肉由来と考えられており、次のようなケースで感染することが多くあります。
- 鶏刺し・鶏レバーなどの生食
- 生焼けの鶏肉
- バーベキューで十分加熱されていない鶏肉
- 鶏肉を切った包丁やまな板による二次汚染
飲食店での発生が多い一方で、家庭内調理における発生も決して珍しくありません。
夏に多いが、一年中注意が必要
発生は6~7月頃にやや増える傾向がありますが、冬にも発生しており、年間を通じて注意が必要です。
患者さんは10~30代の男性に多くみられます。
また、小児では感染性腸炎(胃腸炎)の原因としてみられることがあり、特に10歳以下では入院が必要になることもあります。
主な症状は
- 発熱(比較的長い)
- 腹痛
- 下痢(軽い水様便から血便までさまざま)
です。
多くは5~7日ほどで自然に改善しますが、下痢はしつこく2週間以上続くこともあります。
他の食中毒と違う特徴
1. 潜伏期間が長い
カンピロバクター食中毒の特徴は、潜伏期間が長いことです。
食べてから症状が出るまで2~5日(長いと10日程度)かかることもあり、「1週間前の食事が原因だった」ということも少なくありません。
診療の際にはそこまで遡って食べたものを思い出せると、正しい診断に近づきます。
2. 高熱が長く続く
カンピロバクターは「腹痛・下痢」といった胃腸炎の側面と、「高熱の持続」といった発熱性疾患の側面の両方をもっています。
他の胃腸炎や食中毒と比べて高熱が出やすく、長く続く傾向があるため、最初は風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などが疑われることもあります。
3. 特殊な合併症
治癒したあとごくまれに、ギラン・バレー症候群や反応性関節炎、潰瘍性大腸炎などの合併症を起こすことがあります。
なお、ほとんどの患者さんでは自然に治るため、抗菌薬(抗生物質)は原則必要ありません。
抗菌薬に合併症を予防する効果もありません。
迅速診断が可能となりました
これまで、カンピロバクターと診断するためには便の培養検査を行い、結果が出るまで1週間程度待つ必要がありました。
しかし最近になり、その場で結果が出る「迅速抗原検査」が利用できるようになりました。
ファミリークリニックあざみ野でも迅速抗原検査を導入しましたが、予想以上に多くの方が陽性となる印象です。
迅速検査が可能となったことで、今後インフルエンザのようにカンピロバクターの診断が増え、より身近な病気となる可能性が高いと考えています。
たとえば夏場に若い人が高熱と腹部症状(腹痛・下痢)を発症したら、カンピロバクターの可能性はかなり高いです。
今日からできる予防法
カンピロバクター感染症は、日頃の注意で予防ができる病気です。
鶏肉を調理したり外で食べるときは、以下の点に気をつけましょう。
- 鶏肉は中心部75℃で1分以上を目安に十分加熱する
- 「色が変わった=火が通った」とは限らない
- 鶏刺し・鶏レバーなどの生食はリスクがあることを知る
- 「新鮮だから安全」は誤解
- 生の鶏肉を切った包丁やまな板は、野菜などに使い回さない
- 鶏肉を触った後は石けんでしっかり手を洗う
食中毒は「特別な食品」で起こるのではなく、普段の食卓でも起こり得ます。
夏場はもちろんのこと、一年を通して正しい加熱と衛生管理を心がけ、カンピロバクター食中毒を予防しましょう。


