
肥満とは、体に脂肪が多くたまった状態をいいます。
具体的には、BMI(以下の式で求める)を測定し、これが25を越えた状態を肥満と呼びます。
BMI=体重÷[身長(m)]の二乗
肥満と肥満「症」は違う
肥満に加え、肥満に関係する以下の健康障害がある状態を、「肥満症」と呼びます。肥満症は明確な病気です。
- 耐糖能障害(糖尿病)
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)
- 脳梗塞
- 非アルコール性脂肪性肝疾患
- 月経異常・不妊症
- 睡眠時無呼吸症候群
- 運動器疾患(変形性膝関節症など)
- 腎臓病
一方、これらの健康障害がなければ、体重が重くても「肥満」というだけで治療の対象にはなりません。
ただし、肥満の方の多くはこれらの健康障害のうちどれかを持っている可能性が高いです。
肥満症のリスク
肥満症は早死のリスクを高めることがわかっています。たとえば、40歳で高度な肥満症(BMI30以上)の人は、正常体重の人よりも寿命が6〜7年短くなるとされています。
肥満は「命の長さ」だけでなく「健康に生きられる時間」にも大きく影響します。特に中年期以降の肥満は寿命を6〜7年縮めるだけでなく、健康寿命も短く障害リスクも高めることが多くの研究で示されています。
肥満症の治療〜GLP-1について
肥満症の治療の第一選択はもちろん減量です。一般にはまず食事療法からはじめ、可能なら運動療法を取り入れていきます。
まずは「体重の5%」の減量を目指します(5%の減量でも、血圧や脂肪肝などに良い影響があります)。
小さなゴールを設定し成功体験を積み重ねながら、ゆっくり時間をかけて減量していくのが理想です。
GLP-1受容体阻害薬は、2023年に初めて登場した画期的な薬で、もともとは糖尿病に対する薬として開発されましたが、大きな減量効果があるとして肥満症の治療にも役立てられるようになりました。
本来の用途ではない、痩身や美容目的に利用されることがあり問題視されていますが、上記の通り肥満症は11の疾患に関連する重大な病気であることは確かであり、これを治療し、11の健康障害をまとめて改善する可能性のある薬が登場したことは医学的に大きなブレイクスルーです。
これまで肥満症に対して行われてきた食事療法、運動療法は本人の多大な努力を要するものであり、誰もが実行できる治療法ではありませんでした。ここに新たな治療の選択肢が出てきたことは、多くの患者にとって朗報ということができると思います。
前述の問題から、現時点では肥満症に対して保険診療内でGLP-1を用いるには様々な制約が設けられています。多くのケースでは自費診療を用いて、GLP-1による治療を行うことになります。ご興味のある方はぜひ一度クリニックにご相談ください。