
スマートフォンやパソコンの使用時間が増えたことで、「目が疲れる」「頭痛がする」「肩こりや首こりがつらい」という相談が増えています。以前はDVT症候群と呼ばれていましたが、現在ではデジタル眼精疲労(Digital Eye Strain)、あるいはCVS(Computer Vision Syndrome)として知られ、現代の新たな生活習慣病とも考えられています。
主な症状
視力に関する症状:視界がぼやける、かすむ
ドライアイ症状:乾燥感、異物感、充血
眼精疲労:目の奥の痛み、重だるさ、まぶたのけいれん
光過敏:光がまぶしく感じる、光の刺激で頭痛が起きる
骨格筋に関する症状:肩こり、首の痛み、腰痛など
特に光過敏による頭痛は若い女性に多い傾向があります。
なぜ眼精疲労・頭痛が起きるのか
原因は大きく二つあります。
①近くを見続けること(近業)
画面を長時間見続けることで、輻輳(寄り目)、調節(ピント合わせ)、縮瞳(瞳孔の収縮)といった近見反応を休みなく続けることになり、脳の疲労につながります。
②光の刺激
片頭痛の約8割には光過敏があるといわれています。ブルーライトは網膜のメラノプシンを刺激し、三叉神経や視床につながる経路で痛みとして認識されます。さらに、目の奥の血管を拡張させることで頭痛や目の奥の痛みを引き起こします。
現代の生活で悪化しやすい理由
日本人が最も疲労する姿勢は「パソコンの前に座っている時」と言われています。
仕事中は交感神経が優位ですが、近距離を見る作業では副交感神経も働くため、自律神経のバランスが崩れやすくなります。
仕事中は画面を見続けることでまばたきが減り、乾燥した環境ではドライアイが進行します。
子どもの内斜視、目の疲れの増加
子どもの内斜視が増えているとも報告されています。スマホとの距離が20cm未満、1日4時間以上の連続使用で内斜視になるリスクが高まると言われています(スマホ内斜視)。
子どもも大人と同じように、スマートフォン・タブレット・ゲーム・パソコンの長時間使用によって眼精疲労を起こします。近年は、オンライン授業や動画視聴の増加に伴い、小学校低学年の段階から目の疲れや頭痛を訴えるケースが増えています。
治療・対策
- 屈折矯正の適正化(メガネ・コンタクトの見直し、中近両用が有効な場合もあります)
- ドライアイ治療(点眼薬の使用、蒸しタオルによる温庵)
- 作業環境の調整(画面の明るさ、姿勢、光源の位置など)
そして最も重要なのは「使い方の工夫」です。
目に負担をかけ続ける時間をつくらないことが予防につながります。
おすすめの方法
- 20分使用したら20秒間、6メートル以上離れた遠くを見る
- 画面を近づけすぎない(30センチ以上)
- 暗い部屋で画面を見ない
- 寝る前のデバイス使用は控える
- 長時間座りっぱなしにならない
姿勢・部屋の明るさ・画面までの距離を整えることは、子どもの頭痛や集中力の改善にもつながります。
受診のタイミング
目の疲れ・頭痛・光過敏が1〜2週間続く、片頭痛が強い、視力低下や複視(物が二重に見える)がある場合は眼科受診をおすすめします。必要があれば屈折矯正やドライアイ治療を併用します。
まとめ
目の疲れは目だけの問題ではなく、頭痛、肩こり、自律神経の乱れにもつながります。
ブルーライトと近見負担が大きな要因であり、治療とともに日々の使い方を整えることが重要です。
今日からできる予防策として、20-20-20ルールの実践をおすすめします。


