
「GLP-1ダイエット」という言葉を、メディアで目にする機会が増えてきました。
GLP-1受容体作動薬は、もともと糖尿病の治療薬として使われてきた薬です。
近年では肥満症に対する高い減量効果が明らかとなり、肥満症治療にも使われるようになりました。
GLP-1薬を痩せる薬として使って大丈夫なのか?
メリットだけでなく、知っておきたいデメリットについても、科学的なデータをもとに解説します。
そもそもGLP-1とは
GLP-1は、食事をしたときに腸から分泌されるホルモンです。
脳に働いて食欲を抑えたり、胃から食べ物が排出されるスピードを遅くしたり、血糖値に応じてインスリンの分泌を促したりする働きがあります。
GLP-1受容体作動薬は、このGLP-1の働きを利用した薬です。
最大の特徴は、単に「我慢して食べない」のではなく、食欲そのものを低下させ、少ない食事でも満足しやすくすることです。
実際、どのくらい痩せるのか
その効果は、従来の肥満治療薬と比較してかなり大きなものです。
肥満・過体重の成人約2,000人を対象とした「STEP 1試験」では、GLP-1薬であるセマグルチドを68週間使用したところ、参加者の平均体重が約15%減少しました。
80kgの人なら、単純計算で約12kgの減量に相当します。
当院で使用する実感としても、元々の体重の10〜15%減量される方が多い印象です。
「痩せる」だけではなく、心筋梗塞や脳卒中も減らす
GLP-1薬の評価は急速に変化してきています。
元々は「糖尿病の薬」、その後「よく痩せる薬」という位置づけでしたが、現在は肥満症そのものを治療し、心血管イベントまで減らしうる薬というところまでエビデンスが積み上がっています。
17,604人を対象とした大規模な「SELECT試験」では、糖尿病ではないものの、心血管疾患の既往がある過体重・肥満の人にセマグルチドを使用しました。
その結果、心血管死・心筋梗塞・脳卒中を合わせた重大な心血管イベントは、
8.0% → 6.5%
に減少し、相対的なリスクは20%低下しました。
つまり「体重計の数字が減る」だけではなく、将来の重大な病気を減らす可能性が実証されているわけです。
肥満は糖尿病、高血圧、脂質異常症、心筋梗塞、脳卒中など多くの病気につながります。
その大元にある「肥満」そのものを治療することで、将来の重大な病気を予防できる可能性が示されているのです。
もちろん、良いことばかりではありません
一方、GLP-1薬にはデメリットもあります。
最も多いのが、吐き気、胃もたれ、下痢、便秘などの胃腸症状です。
特に治療開始時や薬を増量したときに出やすいため、通常は少ない量から徐々に増やしていきます。
また、胆石や胆嚢炎などの胆嚢関連疾患がやや増えることも報告されています。
膵炎が増えるといわれることもありますが、大規模試験では必ずしも増えておらず、明確に「膵炎が増える」とは言い切れません。
それよりも、最も危惧すべき弊害ではないかと思われるのが、「筋肉量の減少」です。
こちらもまだ明確な科学的根拠はありませんが、体重が大きく減れば脂肪だけでなく筋肉などの除脂肪体重もある程度減少します。
若年者ではまだしも、中高年以降での筋肉量の減少はフレイルにつながり、時に命取りになったり、要介護状態の原因にもなりかねません。
そのため、特に中高年以降では十分なタンパク質を摂取し、適度な運動、筋力トレーニングを行いながら減量することが必要です。
やめたらどうなるか?
薬をやめると体重が戻るということも知っておくべきです。
STEP 1試験の追跡調査では、セマグルチド治療によって平均17.3%体重が減少しましたが、薬を中止して1年後には、減った体重のおよそ3分の2が戻っていました。
血圧や代謝などの改善効果も、治療前の状態に近づく傾向がみられました。
これは、肥満症そのものが、高血圧や糖尿病と同じように長期的に管理する必要のある病気だからです。
降圧薬を飲んで血圧が正常になっても、薬をやめれば再び血圧が上がります。
それと同じように、GLP-1薬についても「痩せたら薬をやめて終わり」とはならないことを理解しておく必要があります。
GLP-1は「魔法の痩せ薬」ではなく、肥満症を治療するための薬
GLP-1薬について、「薬で楽に痩せるなんてズルい」「努力して食事と運動だけで痩せるべき」と考える必要はありません。
肥満には食生活だけでなく、遺伝、ホルモン、睡眠、ストレス、生活環境などさまざまな要因が関係しており、必ずしも根性だけで治せるものではありません。
一方で、「簡単に痩せられるから」と誰にでも使ってよい薬でもありません。
大切なのは自分はなぜ体重を減らす必要があるのか、そのためにGLP-1薬を使うメリットがデメリットを上回るのかを考えることです。
GLP-1薬や体重、生活習慣病について気になることがあれば、ファミリークリニックあざみ野でいつでも相談を受けつけております。


