
原発性多汗症とは
原発性多汗症は、過剰な発汗を特徴とする疾患です。原因は不明で、通常、遺伝的要因が関与していると考えられています。主に手のひら、足の裏、脇の下、または顔に過剰な発汗を認めます。原発性多汗症では、身体的な活動や温度上昇に関係なく、発汗を引き起こします。
治療には、薬の内服や外用、イオントフォレーシス(水を使用した電気治療)、ボトックス注射、手術などがあります。
原発性多汗症と社会生活
成人人口の3〜10%が原発性多汗症に悩まされていると推定されています。
多汗症は、特に社会的な状況や職場環境での対人関係において、患者の生活の質に大きな影響を与えることが知られています。多くの患者は、恥ずかしさや自己意識の高まりを感じ、社会的な活動や対人関係を避けるようになることもあります。
重要なのは、多汗症が身体的な症状だけでなく、心理的、社会的な影響も伴うため、適切な支援と治療が必要であるということです。患者自身が自分の状態について理解し、必要な医療やサポートを受けることが重要です。
また、周囲の理解とサポートも、患者のQOL(生活の質)向上に貢献します。
情動発汗と温熱発汗
発汗には「情動発汗」と「温熱発汗」があり、多汗症では主に情動発汗の過剰で発汗が促されると考えられています。
運動や体温の上昇などにともなって発汗するのが温熱発汗ですが、不安や緊張、恐怖など感情に対する反応として発汗するのが情動発汗です。
温熱発汗は身体全体から汗が出るのに対し、情動発汗では手のひらや足の裏、わきの下など局所に発汗が集中するのも特徴です。
発汗の種類 | 原発性多汗症との関係 |
---|---|
情動発汗 | 強く関係あり◎→ 多汗症の多くは情動発汗の亢進型。緊張やストレスで手汗・腋汗が過剰に出る |
温熱発汗 | 通常はあまり関係しない△→ 原発性多汗症の汗は「体温上昇」ではなく、「感情や自律神経の反応」で出る |
二次性多汗症(参考) | 原因となる病気(甲状腺機能亢進症、糖尿病、感染症など)があるものは温熱発汗を伴うことも多い |
原発性多汗症の治療では、この「情動発汗」を抑える薬を使用するのが原則となります。
原発性多汗症の治療
ここ1〜2年で有効な治療薬が次々と発売され、治療効果が高まっています。
- エクロックゲル
- ラピフォートワイプ
- アポハイドローション
アポハイドローションは唯一、手のひらの多汗症に対しても使用可能な薬です。
エクロックゲルとアポハイドローションは、乳液のように塗り込んで使用します。ラピフォートワイプは1回使い切りのシートタイプで、持ち運びにも便利です。効き目も早いです。
ラピフォートワイプは9歳から、他の2剤は12歳から使用可能です。
副作用を起こすので、薬を使った手で目や口などの粘膜面を触らないようにする注意が必要です。