
血便は、多くの人にとって衝撃的な症状のひとつですが、原因や対応方法は年齢によって異なります。
ここでは、乳児から高齢者までの年齢別に、考えられる原因と対応方針について解説します。
0~1歳(乳児)
・肛門裂傷(いわゆる切れ痔)
離乳食がはじまると便秘になるお子さんが増えます。硬い便が通過することで一時的に肛門が切れ、出血を起こすことがあります。肛門の粘膜に傷がついていることで診断が可能です。治療には便を柔らかくする薬を使うことが多いです。
・食物アレルギー
食物アレルギーではじんま疹などの皮膚症状が出現するものが有名ですが、血便などの消化器症状が出現する「消化管アレルギー」という特殊な病気があります。
・感染性腸炎
ウイルスや細菌による腸炎で下痢を繰り返すと、腸の粘膜が剥がれ出血を起こすことがあります。その場合、便にゼリー状の粘膜や血が混ざって出てくることがあります。
・腸重積
乳児の血便で最も気をつけなければいけない病気が腸重積です。腸が腸の中に入りこんでしまい、激しい腹痛をきたします。痛みを上手に伝えることが難しいことが多いため、血便とともに不機嫌や大泣きがみられるときは、早急に医療機関を受診する必要があります。
・リンパ濾胞増殖症
赤ちゃんの便の中に赤い糸のような血液が混じることがあります。母乳育児のお子さんでよくみられます。病的意義はなく、自然に治ります。
1~15歳(小児)
・肛門裂傷
・食物アレルギー
・感染性腸炎
16~40歳(思春期・若年成人)
・潰瘍性大腸炎
潰瘍性腸炎は、大腸の粘膜にただれや潰瘍ができる自己免疫疾患の一種で、10代後半から30代に多く見られ、日本でも22万人の患者がいるといわれています。血便に加えて腹痛と下痢がみられ、日常生活への影響が大きい疾患です。診断には、大腸カメラで大腸粘膜を直接観察することが必須です。
40歳以上(中年・高齢者)
・大腸ポリープ、大腸がん
年齢とともにポリープの発生率が上がり、60代では2人に1人の人がポリープを持っているといわれています。大腸ポリープは放置するとがん化のリスクがあります。食の欧米化により、大腸がんの発生率は上がっています。40代では肛門に近い部分のがんが多いですが、50歳を過ぎると全大腸にわたりがんが発生する可能性が上がります。40歳未満でも、家族歴のある場合は大腸がん発生のリスクがあるため、検査が推奨されます。
・痔
裂肛(切れ痔)や内痔核からの出血により血便がみられることがあります。肛門鏡という器具を使って診断可能です(当院でも可能)。
・虚血性腸炎
高齢者に多くみられる病気で、腸の血流が一時的に悪くなり、大腸の粘膜が炎症を起こす病気です。便秘の人に多いともいわれています。ほとんどの場合、腸を休める(絶食)ことで治りますが、重症なものでは入院しての治療が必要となります。
排便時に鮮血が出るだけでも、40歳以上の方は痔と決めつけずに医療機関を受診、必要に応じて内視鏡検査(大腸カメラ)を行う必要があります。特に初めての血便では、大腸がんを否定するために必ず内視鏡検査を受けるようにしましょう。
当院では「地域から大腸がんをゼロにする」ことを目標に、積極的に内視鏡検査を行っております。
少しでも気になる方はお気軽にご相談ください。